文明崩壊 (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

目次

第2部 過去の社会(承前)(存続への二本の道筋)
第3部 現代の社会(アフリカの人口危機―ルワンダの大量虐殺
ひとつの島、ふたつの国民、ふたつの歴史―ドミニカ共和国とハイチ
揺れ動く巨人、中国 搾取されるオーストラリア)
第4部 将来に向けて(社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?
大企業と環境―異なる条件、異なる結末
世界はひとつの干拓地)


日経BP企画
2005年に米国で発売され、ベストセラーとなった話題の1冊である。

著者は生物学から地理学、鳥類学、人類生態学まで、広範な領域で研究を続けている。ピュリッツァー賞を獲得した前作『銃・病原菌・鉄』では、これらの知識・知見を統合し、文明の発展には生態系や地形の特徴などの環境要因が大きく影響したことを指摘した。本書では、文明崩壊のメカニズムを説き明かす。

世界には、過去、大いに繁栄しながら、その後崩壊してしまった社会の遺跡があちこちに残っている。例えば、イースター島、マヤ、北米アナサジ、ノルウェーグリーンランドなど。著者は実際にこれらの地に赴き、栄華を極めたかつての社会に思いを馳はせながら、なぜ崩壊したのか、その過程を探り、いずれも、同様の道筋をたどっていると指摘する。


ルワンダや中国が物語るもの

社会が繁栄すると人口が増える。人口が増えると、農作物の無理な増産やエネルギー消費量の拡大などで環境に過大な負荷が生じる。その結果、食糧・エネルギー不足となり、多すぎる人間が少なすぎる資源を巡って争うなど、共同体内部の衝突が激化する。飢餓・戦争・病気によって人口は減少し、社会は崩壊する ――こういう具合だ。

著者は崩壊の潜在的要因として、環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、友好的な取引相手、環境問題に対する社会の対応という5つの枠組みを設定。崩壊した社会、または存続した社会に当てはめて、検証していく。崩壊を免れた社会の事例として、徳川幕府による「上から下」への統制で、持続可能な林業を作り上げた江戸時代の日本も登場する。

著者のこうした考察は、現代社会への警鐘として帰結する。第三世界の惨事の地・ルワンダ、急速に先進国の仲間入りを果たそうとする中国、最も脆弱ぜいじゃくな環境を抱えるオーストラリアなどの事例を紹介する。今日のグローバル社会では、1つの社会の争乱は別の社会の災厄となることを指摘。我々は歴史を教訓に崩壊を回避し、乗り越えられるのかと問う。

(日経エコロジー 2006/04/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)


内容(「BOOK」データベースより)
江戸時代の日本では、乱伐により荒廃した森林環境が徳川幕府の長期視点に立つ育林政策によって再生し、持続可能な森林管理が実現された。問題解決に成功した社会と失敗した社会の違いはどこにあるか。現代中国やオーストラリアの惨状を分析しつつ、崩壊の危機を乗り越える道の可能性を探る。歴史において個別の社会で発生した勃興・隆盛・崩壊のパターンは、グローバル化した現代ではまさに全地球規模での危機へと拡大しつつある。資源問題、環境問題、人口問題に政治闘争や経済格差の問題も含んで、崩壊への因子はより複雑化している。だが著者は悲観的ではない。観念論ではなく過去の教訓から学んだきわめて現実的かつ建設的な処方箋を提示する。世界を見る眼が変わる力作だ。

内容(「MARC」データベースより)
問題解決に成功した社会と失敗した社会の違いはどこにあるか。現代中国やオーストラリアの惨状を分析しつつ、崩壊の危機を乗り越える道の可能性を探り、過去の教訓から学んだきわめて現実的かつ建設的な処方箋を提示する。


出版社からのコメント
前著『銃・病原菌・鉄』は「文明発展」の道筋を「環境」的要因から探った名著でしたが、今回のテーマは「文明崩壊」の道筋です。その鍵はやはり「環境」にありました。ある社会は、共同体の発生→人口増加→食糧・エネルギー消費の増大→環境への負荷→食糧・エネルギー収量の低下→社会の混乱・破綻→崩壊・消滅というサイクルをたどります。古代マヤ、イースター島、北米アナサジ族、グリーンランドノルウェー入植地、さらには現代のルワンダ、ハイチとドミニカ、中国、オーストラリアなど、本書がとりあげる事例をみても、このサイクルは古代から現代にいたるまで、あらゆる場所で恐るべき確度で繰り返されたことがわかります。そして、過去においては個別の社会で発生したこの宿命的なサイクルが現在、全地球規模で進行しつつあるのも事実です。この危機的状況を乗り越える道はどこにあるのか──それがダイアモンド教授のモチーフです。圧倒的な情報量をたくみに織りなして再現された「文明崩壊」の物語を通じて、観念的な環境保護論に走ることなく、徹底して現実的な視点から存続のための処方箋を提示します。いま最も重要なテーマをきわぁてスリリングな読み物としてまとめあげた全米ベストセラー、待望の翻訳です。