クルーグマンの良い経済学悪い経済学

クルーグマンの 良い経済学 悪い経済学

クルーグマンの 良い経済学 悪い経済学








俗説破りの痛快評論

誤った固定観念を一刀両断!

「国と国とが競争をしているというのは危険な妄想」
「アジアの奇跡は幻だ」


世界市場で成功を収められるかどうかで、
各国の経済的な命運がほぼ決まるというのは、
仮説にすぎず、真実だとはかぎらない。
そして、現実の問題として考え、
事実の裏付けをみていくなら、
この仮説はまったくの間違いである。


競争力にこだわるのは間違いであるというだけでなく、
危険であり、国内政策を歪め、
国際競争システムを脅かしかねない。


東アジアの新興工業国の急成長は、
経済政策と地政学についての常識に大きな影響をあたえている。
グローバル経済を論じる識者の多く、おそらくほとんどは、
アジア諸国の成功から三つの結論を導いている。
・・・いずれの結論も誤っていることは、
研究結果に照らし合わせてみればすぐにわかる。

「競争力」という言葉を使う人たちは、ほとんどの場合、
その意味を深く考えてはいない。

国の競争力を判断するのは、
企業の競争力を判断するときほど簡単ではない。
国の競争力という概念は、とらえどころがないものである。

競争力とは、「国際競争の試練に耐えられる財とサービスを生み出しながら、
国民の生活水準を向上させ、維持できる能力」
    ・・・ローラ・タイソン 経済諮問委員会(CEA)委員長

誰が誰を叩いているのか―戦略的管理貿易は、アメリカの正しい選択?

誰が誰を叩いているのか―戦略的管理貿易は、アメリカの正しい選択?

経済に占める貿易の比率が低い国では、
「競争力」とは「生産性」を奇妙な言葉に置き換えただけのものになり、
国際競争とは何の関係もなくなる。

世界貿易は以前よりはるかに規模が大きくなったが、
各国の生活水準を決める要因としては、
国内要因が圧倒的な比率を占めており、
世界市場での競争の影響は小さい。

相互依存がここまで進んだいまの世界で、
どうしてそんなことが起こりうるのか。

考えられているほど相互依存が進んでいない。
現在ですら、アメリカの輸出総額は、
国民が生産する付加価値(つまりGNP)の10パーセントにすぎない。
理論上、競争力が問題になることはありうるが、
実際の問題としては、世界の主要国は現在、
影響を与えるほどの規模で経済競争を行っているわけではない。


レスター・C・サローはベストセラーの『大接戦』で、
いまの世界では、主要な先進国が
「勝つか負けるか」の競争を繰り広げていると語っている。

大接戦―日米欧どこが勝つか

大接戦―日米欧どこが勝つか

このような見方がいったいどこから出てきたのか?