ゴミ投資家のための インターネット株式投資入門







奇妙なことに、
日本では株ほど評判の悪いものはあまり見当たりません。

「株をやっている」などと言おうものなら、
会社では白い目で見られ、実家からは勘当され、
妻からは離婚を申し渡される(笑)という雰囲気です。


「株式は汚いもの(不浄なもの)だから直接手で触ってはいけない
(誰かが加工して素材の原形をとどめていないなら構わない)」

これは、日本では獣肉に見られるような、
典型的なタブー(禁忌)の構図です。

「株式会社」や「株式市場」こそが、資本主義経済の根幹です。
ところが日本ではどういうわけか、
経済の根幹にある「株式」が「忌まわしいもの」としてタブー視されています。

これこそが、日本に本当の意味での
「資本主義」が根づかない大きな要因になっているわけです。

日本では、ふつうの人が「株式投資」を始めるためには、
まず最初に、このタブーを捨て去らなければならないのです。

経済のことなんかなにひとつ知らなくても、
死ぬまで「会社」が面倒見てくれた幸福な時代は終わってしまったのです。

「株は汚い」と考えられている日本では、その裏返しとして、
「会社は神聖なものである」という“信仰”が存在します。
要するに、「会社は神聖なものだから、それを売買するなんて
マトモな人間のすることではない」とされてきたわけです。


はっきりいってこれは、日本だけで通用する迷信みたいなものですから、
こんなものはさっさと捨ててしまわなければなりません。


私たちは、資本主義の経済法則に支配された市場社会に生きています。
自分たちが暮らす社会の仕組みやルールをちゃんと理解しておかなければ、
上手に生きていくことなどできるはずがありません。

ところが日本の公教育は、子どもたちに経済の仕組みを教えることを
ほとんどしてきませんでした。

資本主義から共産主義への移行段階としての社会主義(正確には社会民主主義)を
「資本家本来の権利を削って、社会全体への利益還元を行う経済システム」
と定義すると、

これまでの日本が紛れもなく「社会主義」の国家であったことがわかります。

企業の最大の目標は、大蔵省・通産省などの指導のもとに、
雇用を含めた「社会的責任」を果たすことだと考えられていたからです。


これは、社会主義以外のなにものでもありません。

一般大衆のお金は郵便貯金か銀行・生命保険に預けさせ、
「資本主義」の本質に目覚めさせないよう株式には手を出させないという、
国家ぐるみの「洗脳」が続けられてきたわけです。

日本では、会社の借り入れに対して経営者は担保を提供し、
個人保証をすることを、金融機関から求められます。


この個人保証によって、
経営者は負債に対して無限の責任を負わされることになります。

日本の場合、金融機関の取り立てが担保以外にも及ぶのです。
担保物権を譲り渡してもなお、借金の返済義務は消えないのです。

担保物件のが値下がりしてしまい、借金を返済する目処が立たなければ、
自己破産するしかありません。


社長一家が夜逃げしたり、首をくくったりするのは、
こうした融資の形態、ウイズ・リコース・ローンWith-recourse loan
(遡及型融資=担保以外にも債務の弁済を求めることができる)
のためでもあります。


欧米では、ノン・リコース・ローンNon-recourse loan
(非遡及型融資=担保以外には債務の返済が及ばない)が普通になっています。

担保の不動産の価格がいくら値下がりしていようとも、
返済の代わりに担保を提供してしまえば、
それで貸し借りなしになります。

未収残高は金融機関の負担になるわけです。

何がなんでも借金を取り立てる血も涙もない
ウイズ・リコース・ローンでお金を貸しているのは、
先進国のなかでも日本の銀行くらいなものです。

日本で資本主義がうまく機能しない理由も、実は、その背景には
このウイズ・リコース・ローンや個人保証の習慣があります。


アメリカの起業家たちも、
私財を投じて新しいビジネスにチャレンジすることはよくあります。
欧米の金融機関も、
いくらなんでも生まれたての会社に無担保でお金を貸してはくれません。

しかしその融資はノン・リコース・ローンですから、
私財を失ってゼロに戻る覚悟があれば、チャレンジできるわけです。

日本の場合、
事業の失敗とは何の関係もない担保価値の下落によって負債が膨らみ、
最悪の場合、生涯立ち直ることができなくなってしまいます。

こんなにリスクが大きければ、誰も新しく会社を興そうなんて考えません。

サラリーマンで一生過ごしたほうがずっとラクに決まってます。


日本だけで通用するウイズ・リコース・ローンというのは、
貸し手(銀行)はリスクを負わず、借り手だけがリスクを引き受けるという、
実に理不尽な制度です。


ところが、バブル崩壊まで、その理不尽さが表面化することはありませんでした。
しかしバブル崩壊によって巨額の担保割れが起きると、
銀行を手厚く守るためにつくったシステムによって不動産市場は凍りつき、
それによって担保はさらに下落して不良債権となり、
とうとう金融システムの根幹を揺るがすような事態にまで立ち至りました。

まさに日本の現在の停滞は、
この国で資本主義の原則が大きく歪められてきたことから生じたのです。