アリストテレスがGMを経営したら 新しいビジネス・マインドの探求

アリストテレスがGMを経営したら―新しいビジネス・マインドの探究

アリストテレスがGMを経営したら―新しいビジネス・マインドの探究







ビジネスとは何か?
働くとは何か?
人生の意味とは何か?


この問いに答えずして、
誰も成功を収めることはできない。

もし、アリストテレスゼネラル・モーターズ(GM)を経営したら、どうなるだろう。

プラトンの流れを汲み、アレクサンダー大王の家庭教師を務めた
人類史上もっとも偉大な思想家にして賢人
そのアリストテレスだったら、今日のビジネス社会で長期的な成功を収めるために、
どう行動するだろうか。


天国からこの偉大な哲学者を呼び出し、
ビジネスや人生について直接アドバイスを求めるとしたら、
何に注意し、どう行動しろと言うだろう?


人生の時間の大半は仕事に費やされる。
だが、その過程のすべてをゼロから築かねばならないわけではない。
また、アイデアや行動戦略をどこから借りてくるにしても、
同時代の人々だけにそれを求めるのは間違っている。


プラトンアリストテレスの時代から今日に至るまで、
何世紀にもわたって非常にすぐれた人々が存在し、
今日私たちが直面しているのと同じ基本的問題に取り組み、
役に立つ偉大な思想を遺してくれていることを、私たちは忘れてしまっている。


そこには、ビジネスにも、それ以外の生活にも応用できる豊かな英知が眠っているのだ。
彼らの導きに従って思索を進め、私たち自身が哲学者への変身を図るなら、
ビジネスでも家庭でも、また人生そのものにおいても、真の卓越、真の繁栄、
そして深い満足をもたらす成功をめざすうえで、最適のポジションが得られるのである。


私たちが現在直面しているすべての問題に対処するうえで最も重要なファクターは、
自己の内面を省察し、日々のビジネス慣行やビジネス関係の内面的基礎を探る能力なのだ。

一人ひとりの生活においても、企業としての活動においても、
今日の世界において持続可能な成功を収める鍵は、
人間精神に関するもっとも古くからの英知を学ぶことによって得られる。

さまざまな圧力を受けて、生産的・創造的な企業精神は危機に瀕しており、
シニカルな不信感、狭量で破壊的な利己心、そして絶望感へと解体されつつある。
仕事に対して不安や脅威を感じたり、
自分の価値が認められていないという不満を持つ人は多い。


「深く掘り下げて考え、自らの力を伸ばすことで、自分になしうる最善のものを実現しよう」
というモチベーションは弱まっている。

企業でもそれ以外の専門職でも、いや文化全般において、
私たちは精神的危機に瀕している。

長期的なエクセレンスの唯一の基盤は、そこで実際に働く人間である。

いまこそ、職場における幸福、満足、意義、達成感といった人間的なテーマに、
より深い関心を注ぐべき時期だ。

こうしたテーマの重要さが認識できなければ、
企業精神を再生することも、エクセレンスに到達することもできない。


その認識がなければ、
リエンジニアリングだろうが顧客ニーズへの注目だろうが、
長期的にプラスの結果を出すことはできないのである。

個人・家庭・友人関係における成功を促すのとまったく同じ原理が、
ビジネス社会や市場におけるエクセレンスに対しても、
直接応用できることが分かる。

ところが、こうした原理は現代のビジネス書ではほぼ完全に無視されており、
最近のマネジメント行動においても十分に理解されているとは言い難い。


幸福感や達成感、「良いことをやっている」という意識や、
仕事の意義などといった内的な報酬がなければ、人に十分なモチベーションを与え、
彼らに可能な最大限のエクセレンスを実現。維持させることはできないのである。

古代からの英知をベースに、
人間のモチベーションやエクセレンスについて哲学的に考察し、
利益というビジネスの重大な関心事を踏まえつつ、
現在直面している明確な課題に対処するうえで現代企業が必要としているものを手に入れる。
何事にも“時”がある。ある種の優秀さにも、流行(はやり)すたりがある。
だが、英知だけは違う。それは永遠だ。
    バルタサール・グラシアン
精神にとって真の薬とは哲学である。
    キケロ
過ちを犯さないのは人の業ではない。賢く善き者は、自らの失敗や過ちから、
将来についての英知を学び取る。
    プルタルコス